売りからも入れる株の信用取引とは? 仕組みや現物取引との違いを詳しく解説

こんにちは! 株識編集部の前田です。

今回は株の「信用取引」について解説します。信用取引とは、簡単に説明すると「自分の資金力以上の株式取引を行うこと」を指します。

その仕組みゆえに大きな損失を被る可能性も高く、加えて現物取引ではかからないコストも発生するので、信用取引を敬遠する人も少なくありません。

しかしSBI証券の調査によれば、2013年以降の売買代金の過半数は、信用取引によるものだそうです。

信用取引とは | SBI証券(他サイトに飛びます)

今や信用取引は、株式投資において主流ともいえるわけですね。これまで敬遠していたという方も、信用取引について知っておいて損はないはずです。

信用取引は別に複雑なものではなく、解説自体も「初心者でもわかりやすく」を心がけていきますので、「信用取引のことをよく知らない」あるいは、「今まで現物取引しかしてこなかった」という方は、ぜひ参考にしてみて下さいね。

それでは、解説していきます。

信用取引とは?

信用取引とは冒頭でも説明した通り、自分の資金力以上の株式取引をすることなのですが、それはどういうことなのか、詳しく解説します。

まず、株における通常の取引(現物取引)の場合は、自分のお金で株を買うことになります。つまり、かかる金額分のお金は、全て自分で用意する必要があります。

対して信用取引の場合は、その必要がありません。なぜなら、株を買うのに必要なお金や、売りから入るのに必要な株は、証券会社が貸してくれるからです。

しかし、証券会社もタダで貸すというわけにはいきません。トレーダーはお金や株を借りる代わりに、自分の信用を証明するものとして、お金や株などの「担保」を証券会社に預けます。

この担保は特に「委託保証金」と言い、信用取引をするためにトレーダーが証券会社に預けるお金です。CFDは証拠金取引という仕組みをとっていますが、それとよく似ているものと考えて下さい。

証拠金取引とは?決済のときに生じた差額だけを、担保から差し引いたり、付け加えたりする取引のこと。そして、その担保を特に証拠金と呼ぶ。この仕組をとっている金融商品に、CFDやFXがある。

証拠金取引はレバレッジをかけて取引できますが、信用取引でも同じくレバレッジをかけることができます。証拠金取引のように、トレーダーが預けるお金はあくまで担保という仕組みを取っているからこそ、自分の資金力以上の取引ができるというわけですね。

ちなみに信用取引でかけられるレバレッジは3.3倍まで。つまり、30万円の自己資金で100万円までの取引ができます。

委託保証金に株を使ったらどうなるの?

至極当たり前のことを書きますが、委託保証金としてお金を30万円分差し入れたら、委託保証金も30万円になります。

では、委託保証金として株式を差し入れたらどうなるのでしょうか? お金と同じように、30万円分の株式を差し入れたら、委託保証金も30万円になるのでしょうか? 結論から言うと、そうはなりません

株は相場によって価格が変動します。そのため、実際の価格よりも低く評価し、余裕を持たせなければいけないのです。この低く評価されるときの比率を、特に掛け目と言います。

掛け目は証券会社や有価証券の種類により様々ですが、上場株式の場合は、実際の価格の80%に設定されていることが多いです。

つまり、30万円分の株式を差し入れたら、委託保証金は24万円になるというわけですね。

信用取引には2種類ある

信用取引には、制度信用取引一般信用取引の2種類があります。

制度信用取引は取引所が選定した銘柄のみ取引でき、返済期限が6ヶ月以内と定められています。一般信用取引はほぼ全ての上場銘柄を取引でき、返済期限は無期限とされていることが多いです。

それぞれの簡単な特徴についてはそんな感じですが、売りから入る取引ができるのは、制度信用取引のほうです。一般信用取引では、ごく一部の例外を除いて、売りから入ることはできません。

ただし、一点だけ注意してほしいことがあります。制度信用取引ができる銘柄を特に制度信用銘柄というのですが、その中でも売りから入れる銘柄は、賃借銘柄というものに限られます。制度信用銘柄でも、必ずしも売りから入れるわけではないのです。

その他にも、かかるコストの面で様々な違いがあります。表にまとめてみました。

制度信用取引 一般信用取引
対象銘柄 取引所が選定した銘柄 原則全上場銘柄
返済期限 最長6か月 証券会社が決めた期限、あるいは無期限
信用売り 賃借銘柄のみ可能 ごく一部の例外を除いて不可能
貸株料 1.15% 4%ほど(証券会社による)
金利 2.80% 3%ほど(証券会社による)
逆日歩 発生する 発生しない

新に貸株料金利逆日歩(ぎゃくひぶ)という単語が出てきましたね。順を追って説明します。

貸株料とは、読んで字のごとく、株を借りるときにかかる金利のことです。つまり、売りから入ったときにかかるコストですね。

制度信用取引の場合、年率は取引所が定めるので一律1.15%ですが、2017年7月現在のものなのでそのうち変わる可能性はあります。一般信用取引だと、貸株料は証券会社が自由に決められるので場合によりけりですが、制度信用取引より少し高めに設定されていることが多いです。

金利とは、証券会社からお金を借りたときにかかるコストのことです。つまり、貸株料とは逆に買いから入ったときにかかるものですね。

こちらも貸株料と同じく、制度信用取引の場合は一律2.80%に設定されており、一般信用取引の場合だと、制度信用取引より少し高めといった感じです。

そして逆日歩ですが、あまり聞き慣れない単語ですね。

逆日歩とは、たくさんの信用売りによって市場の株式が足りなくなったとき、トレーダーが負担、あるいは受け取るお金のことです。逆日歩が発生した場合、売りから入るときはコストになり、買いから入るときは利益になります

信用取引が現物取引と違う点

これまで信用取引について解説してきましたが、現時点で分かっている現物取引との違いは、主に以下の4点です。

  • レバレッジをかけられる
  • 売りから入れる
  • 貸株料や金利がかかる
  • 決済期日が定められている場合がある

実はこれらの他にも、現物取引と異なる点は他にもいくつかあります。詳しく見ていきましょう。

回転売買ができる

現物取引は差金決済取引の禁止と言って、その日のうちに同一銘柄を同一余力内で何度も売買することが禁止されています。一日のうちに何度でも取引できるとギャンブル性が強くなりますし、個人投資家が意図的に市場価格を操作するのを防ぐためという理由もあります。

対して信用取引にはこの制約がなく、同じ銘柄を何度でも売買できるのです。そのため、現物取引よりもデイトレード向きと言えますね。

追証が発生する可能性がある

追証(おいしょう)とは、追加で発生する委託保証金のことで、委託保証金率が最低委託保証金維持率を下回ったときに発生します。最低委託保証率は証券会社によりますが、20%であることが多いです。

委託保証金率と聞いてもピンとこないと思うので、例を挙げてみます。

例えば60万円を委託保証金として差し入れ、A社の株を200万円信用買いしたとします。この時点では委託保証金率は30%です。この後A社の株価が下落し、200万円から170万円に値下がりしたとしましょう。

このときの委託保証金は含み損を差し引くと30万円となり、委託保証金率は約17%になります。こうなると、最低委託保証金率である20%を下回っているので、追証を求められることになります。

計算式にするとこんな感じです。

新規注文時 60万円 ÷ 200万円 × 100 = 30%

A社株価下落時 30万円 ÷ 170万円 × 100 = 17.64……%

追証を解消したい場合は、含み損が出た建玉を決済するか、追加で委託保証金を差し入れる必要があります。例に挙げた場合だと、170万円まで下がったなら34万円の委託保証金を維持する必要があるので、決済したくなければ4万円を追加で差し入れる必要がありますね。

現物取引の場合、いくら株価が下ろうとも持っているものの価値が下がるだけなので、このような追加コストが発生する心配はありません。

審査がある

信用取引をするには、現物取引と違って審査が必要です。信用取引はその特徴ゆえに損失が膨らみやすいので、仕組みを十分に理解してる必要があるからです。

審査の難易度は証券会社によってまちまちで、投資の経験が一年以上必要な場合もありますし、資産が100万円以上あるのが条件だったりすることもあります。

しかし、現物取引にしろ信用取引にしろ、金融商品に対して深い理解があるのは審査があるないにかかわらず大事なことです。

優待を受け取れないが、配当調整額は受け取れる

信用取引の場合、トレーダーは実際に株券を持つわけではありませんから、株主優待は得られません。「なら、配当金も受け取れないのでは?」と思うかもしれませんが、そこは大丈夫。

信用買いなら配当調整額と言って、配当金に相当するお金を証券会社から受け取ることができるのです。

しかも配当調整額の場合、それが発生してすぐに含み益として計算されるので、実際に配当金を得るよりもスピーディーと言えます。

しかし、信用売りの場合は配当調整額を支払うことになるので注意して下さい。

まとめ

以上、信用取引の仕組みと現物取引との違いについて解説しました。

全体的に見れば、現物取引ではかからないコストが信用取引だとかかったり、起こり得ないリスクが信用取引では起こりうるなど、デメリットの数が多いようにみえます。

しかし、レバレッジによって大きな利益を期待できる点と、売りからも入れる柔軟性は信用取引だけのメリット。

例えば不正会計問題で有名な東芝の株価は、2015年3月末の時点からたった1年で350円も値下がりしました。これを機にと、信用売りで儲けた人も多いのではないでしょうか?(※)

※今年の6月24日、東芝は制度信用銘柄から除外されているので、現在は東芝株を信用取引することはできません。

現物取引しか知らない人は、株価が下がるとうろたえる他ありませんが、信用取引のことを知っていれば、「ならば売ろう」と冷静に対処できるのです。知っているのと知らないとでは、取れる選択肢の幅が全く違うわけですね。

信用取引の仕組みとリスクを十分に理解した上で、あなたのトレードに役立てて下さい。

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